沈黙期間が終わると徐々に会社から情報が発信されるようになると先程話をしました。
待ちに待った情報なのですが、厄介なことにこれらの情報が社内を引っ掻き回します。
朝令暮改が頻発するのです。
合併で朝令暮改が頻発する理由は非常に厳しい時間管理の中で大量の意思決定が同時に行われることが原因だと考えています。前項ー2.沈黙期間が不安を生む で話をした通り、実務レベルの社員には合併が予定されていることなど知らされていません。
当然の事ながら殆どの社員は合併を迎える準備など出来ているはずもありません。
しかし合併による統合を終了しなければならない日は決められています。
統合が遅れた場合、市場をはじめとして様々な影響が考えられるので、統合作業が終了したという体裁だけでもなんとかその日までに整えなければなりません。
そのような条件の中、統合作業を予定通りに終了させるには限られた時間の中で沢山の意思決定を同時に行わざるを得ない事態となってしまいます。
合併ではやらなければならない課題や、解決をしなければならない問題がそこかしこに横たわっていますから、片っ端から意思決定を行い兎に角、物事を手当たり次第に前に進めていかないと決められた終了すべきゴール日程に間に合いません。
「事業継続に必要な認可はどうするのか?」
「事務所はどうするのだ?」
「就業規則などの社内規定はどうするのか?」
「給与や退職金、福利厚生の調整をどのように行うのか?」
「担当が重複する職務はどうするのか?」
「人員削減を行うがその対象者をどのように選ぶのか?」
「人員削減による退職者の特別退職金はどうするのだ?」
このような課題や問題に次から次へと待ったなしで意思決定を行わなくてはなりません。
しかし、時間の制約がある中で沢山の意思決定が同時平行で行われると、往々にして意思決定間の連携に気を配る余裕がなくなり、意思決定と意思決定の間に必要な情報交換、つまり「根回し」が疎かになってしまいます。
その結果、いったんは意思決定を下し、いざ実行に移したものの、その後、その意思決定に重大な影響及ぼす他の意思決定が存在していることを知り、自分たちの意思決定の再検討を行わなければならない事態に迫られます。
実際に私が経験をした例を紹介させて下さい。
ある部門では合併早々に人員削減を行わない旨が発表されました。
その部門に所属する社員全員が誰も書けることもなく新組織に異動するというのです。
新部門の編成はその部門責任者に任されており、部門が抱える業務の量と質を考えると、全員が残ることが妥当と判断し、全員を残留させるという意思決定が行われました。
しかし、その後この発表は撤回せざるを事態に。
部門責任者が組織編成を考えていたころ、会社の上層部は外部コンサルトを交えて合併の相乗効果を最大にする目的のプロジェクトチームを立ち上げており、このプロジェクトチームが合併後の会社像について精査を行った結果、人員削減が必要と判断したのです。
そして人員を適正にするためには、「全社的な人員削減も止む無し」という結論に達し、この部門もその人件費削減の対象となりました。これでは部門責任者も組織について再度検討をしないわけにはいけません。
検討の結果、残念ながらそれなりの人数の社員が早期退職制度により会社を去らなければなりませんでした。
このような意思決定の変更は社員に戸惑いと困惑をもたらし、当然のことながら混乱が生じさせます。
そして意思決定の変更が他の意思決定にも影響を与え、混乱が混乱を招き、社内のそこかしこが混乱に溢れかえってしまう状況となってしまいます。
(Kawashima)