15.固定費的な仕事と投資的な仕事(2)

 固定的な仕事と投資的な仕事ですが、企業にとって価値がある仕事はどちらでしょうか?
きれいごとではなく、両方大切です。
 ただし、労働市場の評価、言葉を代えれば採用活動の難易度でいえば、圧倒的に投資的な職務の採用が難しいというのが私の実感です。
投資的な職務を担当している方の絶対数は限られている上に、現職の場合、企業や事業、部門の将来を担っており、各企業で大切にされているのでなかなか市場に出てきません。一般的な求人広告で採用することはほぼ不可能であり、マネージメントに近かったり、かなり特殊な経験や資格が必要な職務では高額な依頼料を支払っていわゆるヘッドハンターさんにお願いをしなければならない場合もあります。
また、投資的な仕事は能力もありますが、その方の仕事の進め方、物事の評価の仕方、周囲との関係性に対する距離感など、人それぞれにより異なる属人的な部分も考慮して、組織やその周囲との親和性も考慮に入れなくてはいけないと考えており、そのようなチューニングが結構大変な作業となります。
 採用の難易度の観点で双方の仕事を比較すると、企業にとってより去就に注意を払う劇なのは投資的な仕事なのでしょう。しかし、合併においては固定的な職務担当者の役割と重要度の高さを痛感することとなりました。
実をいうと投資的な仕事は将来に向けたものが多く、短期的な成果には必ずしも貢献するわけではありません。
現実的に投資的な仕事の担当者がいなくなっても、日々の業務を廻していくことに、さしたる影響はないと考えてよいでしょう。

 それに比べ、固定的な仕事はまさに日々の会社の活動であり、その活動の善し悪しが会社の短期的な成果に直接的な影響を与えます。
 例えば、営業戦略を考える営業の責任者が何らかの理由で不在となっても、営業の日々の活動に大きな影響を及ぼすことはありませんでしたが、顧客を訪問している営業担当者が不在となると、その営業担当者の活動で得られていた売り上げはその時点で即見込みが立たなくなってしまいます。その売り上げをカバーするためには何らかの手を打たなければなりません。
 通常であれば、そのような状況から早急に抜け出すため、社内から適当と思われる人物を配転したり、外部から後任として誰かを採用するなどという行動を撮るのが一般的でしょう。
外部採用などは景気動向やや市場動向などの影響ですぐに採用できるわけではないかもしれませんが、後任を採用をすると決めたのであれば積極的な行動がいくらでも取れるはずです。

 ところが合併発表されると、本来であれば後任をすぐに手配したいところですが、現実的にはかなり困難に。後任を社内に求めようにも他の異動との兼ね合いや、組織がどうなるのか未だ結論が出ていないために後任の配転をどのようにすべきなのかすぐに決定出来ません。
 それでは社外に後任を求めることはどうでしょうか?、組織がどうなるのかわからない状態で後任を採用するのはあまりにも後任に無責任(入社したもののすぐにポジションが無くなる可能性あり)となりえる状況を生みますし、そもそも合併が決まった会社に応募しようとする人はほぼ皆無です。これも現実的ではありません。
 後任補充はままならず、担当者不在の状況となり、日々の業務が停滞することが避けられなくなり四苦八苦することとなります。その結局は誰かが「余計な仕事」として無理を押してでも停滞した業務を処理をしてゆかなければなりません。

後任が見込めているのであれば、それまでの間、一時的なことと理解してして「余計な仕事」にも耐えることが出来るでしょうが、見込みがないのであればその「余計な仕事」を背負った人は大きなストレス、そしてあきらめを抱えこんでしまっても、全く不思議なことではありませんし、後ろ向きな姿勢と一概に責めるのはかわいそうな気がいたします。何度も申し上げていますようにそのような状態は組織のモチベーションを下げる結果を招きます。

 合併で大切なことは業績を出し続けることです。
そしてその業績を支える短期的な仕事の担当者がいなくなると、業績を出し続けることが困難となり、その結果企業や事業に致命的ダメージを負いかる事態を招きかねません。
固定的な仕事の担当者は居ることが当たり前、採用にも苦労しないという認識のまま合併にの像と大きな落とし穴にはまるかのせいがあります。
現に私も最初の合併でそのような事態となって初めて事の重大さを認識した次第であり、対応に四苦八苦しました。

 合併では「今まで通り」が通用しない場面に多々出くわします。
固定的な仕事と投資的な仕事について話をしてまいりましたが、実はこれがわたくしの伝えたかったこと。
業績を出し続けることはあなたの会社や組織、そしてあなた自身を守ろこと。
そのためにことに望むにあたり今までの経験や概念を一度きれいに払拭し、置かれた状況を慎重かつ丁寧に観察したうえで、充分に想像を働かせ、最悪を想定したシミュレーションなどを通して、現実に柔軟に対応できる心構えを作っておくことが大切です。


(Kawashima)